アートなみやぎ

第2回「加川広重」

かがわ・ひろしげ
1976年、宮城県蔵王町生まれ。2001年武蔵野美術大学油絵科卒業。2003年より巨大水彩画の制作を始め、仙台、東京、神戸などで発表。震災後、東日本大震災にインスピレーションを得て5.4m×16.4mの巨大絵画を描く。巨大絵画を用いた展示に2015年『第五回1000人のチェロコンサート』ゼビオアリーナ仙台/仙台、『ひとのちから~祈りを奏でる、祈りをおどる~』第3回国連防災世界会議/2014年『加川広重 巨大絵画が繋ぐ東北と神戸2015』デザインクリエイティブセンター神戸、など。平成24年度宮城県芸術選奨励新人賞

http://www.kagawahiroshige.com/

加川さんの手掛けた震災画3点

震災画第一作 『雪に包まれる被災地』 5.4m×16.5m/2011年

震災画第二作 『南三陸の黄金』 5.4m×16.5m/2012年

震災画第三作 『フクシマ』 5.4m×16.5m/2014年

インタビュー

今回のインタビューは2015年5月24日に行なわれた「第5回1000人のチェロコンサート」のリハーサル会場にて行なわれました。

■会場には今まで描かれた3枚の震災巨大絵画が宙づりの状態で展示されています。まずはそれぞれの絵画についてお聞かせください。

1作目は震災直後に描かれたもので、3・11を表現しようとあのときの状況を構成して組み合わせ、喪失感を表現しました。工場は石巻にあるもので、背景にある大きな船は釜石に乗り上げたアジアンシンフォニーというタンカーをベースにして描いています。さらに、雪に埋もれた部分には津波にのみ込まれた町が無数に描かれていて、近づくと見えてくるようになっています。2作目は南三陸に残された防災庁舎をほぼ実際に近い形で描きました。1作目を見た方から『次は希望のあるものを描いてほしい』という要望もあり、自分としても精神衛生上そいうものを描きたいという気持ちもありましたし、また、この防災庁舎は保存するか否かで揺れていた時期でもありましたので、この現地の状況を描き、残しておこうとも考えました。南三陸を象徴する光と色で希望を表現しています。3作目の『フクシマ』は、震災から3年が経過しても、続いている放射能という異質な悲劇を描いています。震災をテーマにしている身としてはどうしても取り上げないといけない題材でした。しかし、放射能は見えないものなので、最初はなにを描いていいのかわかりませんでした。現地の取材を重ねていくうちに「見えている現実そのものをストレートに描こう」という気になり、爆発した原発の建屋の中に、放射能による汚染のイメージ、悲劇を収め、事故を総合的に描きました。背景に第一原発の敷地を正確に描いてあります。

■3枚の巨大絵画を同時に見て、さらにオーケストラとの融合という今回の会場はとても迫力がありますが、加川さん自身はどのように感じられましたか?

3枚を同時に見ることによって、震災から今までの苦労やいろんなことを思い出しました。また、オーケストラの中で展示するというのは私の演出ではないのですがとても新鮮で得体のしれない迫力があり面白いと感じました。これをきっかけに記憶を思い出したり、福島に思いを馳せたりしてもらえればと。その『窓』のような役割になればいいと思っています。

■震災をテーマに作品を描くことになってかわったことはありましたか?

震災の前から巨大絵画を10作ほど制作していました。その頃は抽象的な印象で鮮やかな色彩を好んで使っていました。それが震災をテーマに描こうと決心し、図案をいろいろと考えていた時に、今までのような手法で発表したのでは失礼なのではないか、と考えるようになりました。もっとしっかり、震災を誠意ある形で伝えたかった。それで具象になりました。巨大絵画一作品は24分割することができ、数枚ずつ描いているのですが、描いている間は頭に悲惨な光景ばかりが浮かんでいたので、一枚の絵にした時はひどい風景になるのではと思っていましたが、展示の場で絵を初めて組んでみた時に、とにかく驚きました。まったくそんなことはなく、むしろ静けさや吸い込まれるような感覚を味わい、予想していたものと完成したものの差が一番大きかった。必死で描いていってできた最高傑作。今でも最初の絵は自分でコントロールした絵じゃなかったなと思っています。力も抜けていて、感じたものをそのまま描いた、そんな作品でした。

■次回はどんな作品を予定していますか?

フクシマをもう一度題材にして描きたいと考えています。1枚では描き足らないほど多くの解決されていない問題を抱えており、自分でもそのぶんリアリティを持って挑むことができると思うからです。完成は来年の春から夏にかけてを予定しています。

■最後に今後の活動予定をお聞かせください。

2015年8月6日に気仙沼の市民会館大ホールにて、レクイエムプロジェクトを予定しています。また、今後はもっと他県や遠い場所での展示、コラボレーションができればいいなと思っています。他県のアーティストが絵の前で東北への想いを表現することによって、現地の人達が自分たちの代弁者としてそのアーティストを見ることができる。巨大絵画には臨場感があるので、私たちの想いを持っていきやすいんですね。しかし、私個人では企画できません、とにかくお金がかかるので(笑)ただ、伝えていく活動は10年でも20年でも続けていきたいですね。一作品であれば私個人でも運ぶことは可能です。あとは会場に高さと広さがあれば展示できます。企画して頂ける方、いつでもご一報ください。

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