アートなみやぎ

第1回「樋口佳絵」

ひぐち・かえ
1975年、宮城県生まれ。東北生活文化大学卒業。個展、グループ展などで作品を発表。主な個展は2005年『N.E.BLOOD 21樋口佳絵展』リアスアーク美術館/気仙沼、『24℃』西村画廊/東京、2012年『I’m here』ROPPONGI HILLS A/D GALLERY/東京、2013年『樋口佳絵展@軽井沢現代美術館』軽井沢現代美術館/長野、など。2005年宮城県美術選奨新人賞、VOCA展2007 大原美術館賞、受賞。装画に『家族狩り』(天童荒太:著)『歳月なんてものは』(久世光彦:著)など。

http://www.kaehiguchi.com

■生まれも育ちも仙台で、離れたことがない、という樋口さん。仙台で描き続ける理由とは?

「わたしはいろんな意味で情報を吸収するのに時間が掛かってしまうので、東京などでは、速度が少し早すぎるように感じてしまいます。刺激的で面白いのですが、情報がたくさんで消化しきれない(笑)。私の作品は強く訴えるよりは、じんわりと滲みだすような作品、出力もゆっくりです。それもあり、距離感を保つためにも仙台にいるのだと思います。あとは、定点観測として同じ場所から見つめ続けるという意味も有ると思います。周りが動き変わって行くのを見つめながら、自分の立っている場所を考えて制作したいと思っています」。

■刺激を求めて外出し、その情報をじっくり練る場所が仙台ということなんですか?

「ねこを飼っているというのもあって、長期旅行がまず難しいんです(笑)。なので、家が基準です。外の刺激というより、暮らしの中から何かを見つける感じです。今立っている、見える場所や日常のささやかなところから作品のテーマが生まれると思っています。それが制作の原点でもあります」。

■家が基準ということですが、どんなお家なんですか?

「制作する場所も自宅のリビングのすぐ隣の部屋で、それこそ暮らしの中のひとつとして制作があります。出勤時間もないですしね(笑)。絵を描こうときっちりと切り替えて、日常から切り離されてしまうと、かえって制作がうまく進まなかった事もありました。そうした日常のエッセンスが、見て下さっている方に親近感を持って頂けている、という事もあるのかも知れません」。

■樋口さんの絵はリアルではないのですが、どこか生々しくリアルな部分を感じてしまうのは制作が日常の延長線だからなんですね。

「絵の質感にもこだわりがあります。支持体には木製パネルを使い、テンペラという技法を使う事で、油絵とは違った、粉っぽい質感になり、それが私の絵の雰囲気を作ってくれていると思います。描かれている図柄からだけではなく、そういった質感も見る方に何かを伝えられる手段だと思いますし、自然の素材感が親しみを感じて頂ける要素のひとつかもしれません」。

■その不思議なリアリティが去年の夏に出版された怪談えほん「かがみのなか」にも表れていると思います。

「怪談えほんは2011年から始まった企画で、とても人気のシリーズだそうです。その第2弾の一作目として、絵を描かせていただきました。頂いた恩田陸さんの文章に合わせての絵の制作だったのですが、登場人物や場面に関しては自由に設定させて頂きました。タイトルの通り、鏡が主役でしたので、仙台の人にはおなじみの定禅寺通りにある「梅原鏡店」さんも登場させてしまいました(笑)。作品が出来た後でご挨拶に伺ったのですが、創業100年をこえる老舗だと伺い驚きました。描かせて頂けてとてもよかったです」。

■最後に宮城県の方へメッセージをお願いします。

「宮城県は海も山もすぐ近くにあり、変化に富んだところだと思います。もちろんいいところも悪いところもあるとおもいますが、今自分が立っている場所を愛するということ。自分が立っている景色というものを改めて見つめて感じることによって、より素敵な発見ができるんじゃないかなと思います。わたし自身も見逃している部分もありますし、そうやってみんなで発見しあうことで、宮城県という土地の素敵さがそれぞれの心の中に育っていくのでは、と思います」。

以下画像:
ターンアラウンド企画 樋口佳絵展ぱんぱかぱーん2015年3月17-29日
ターンアラウンド http://turn-around.jp

「かがみのなか」
恩田 陸・作/樋口佳絵・絵/東 雅夫・編

いえでもまちでも、見ない日はないかがみ。そのかがみと少女をめぐるふしぎなお話。かがみを見るたびにこわさがよみがえる。恩田陸と樋口佳絵が描く、身近にひそむ恐怖の世界。

A4変型判 32頁 定価(本体1,500円+税)

http://www.iwasakishoten.co.jp/special/kaidan/

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